No.002 「切削作業の準備」

さていよいよ切削作業です。
切削作業を行う為に必要な知識は数多くありますが、「早く削ってみたい!」という気持ちを優先して
必要最低限の知識だけ身につけまずは実践!
早速削ってみましょう。
材料を削る為には旋盤用の「バイト」と呼ばれる切削工具を使用します。
このバイトには自分で0から削る完成バイト(ムクバイト)、先端をロウ付けした付刃(つけは)バイト、先端チップが交換でき、研磨する必要のない「スローアウェイバイト」などの種類があります。
今回は初心者でも簡単に削れる「スローアウェイバイト 直剣 2020A 8ミリ角」(写真)を使用し、材料の外周削りを行います。


切削するにあたり、必要最低限かつ重要なのが「バイトの先端(高さ)を固定センターの先端(高さ
にあわせる「センター出し」と呼ばれる作業です。この高さが合っていないと、どんなに良い刃物を
使用してもうまく削ることができません。
心押し軸送りハンドルを反時計回しにいっぱいまで回し、「心押し軸」が出てない状態で「固定センター」を
取り付けます。(取り外しも同じ要領です)「心押し軸送りハンドル」を右に回すと 「心押し軸」がつき出て目盛りが現れます。目盛りを目安に出しすぎに注意しましょう。

心押台を固定しているネジを緩め、スライドし刃物台に近づけます。

「センター出し」を行う際に 固定センターとバイトの先端を直接あわせても
良いのですが、刃物台をネジで緩めたり、「心押し軸」を伸ばしたりと意外に面倒なので
写真のようにミニトースカンを使用するのもお勧めです。
トースカンはこのように高さを合わせたり、その高さでケガイたりする際に非常に便利な測定工具です。

センターの高さをバイトに合わせましたが、バイトの高さが若干低くなっています。

このバイトの高さを調整するのが写真の敷板セット(No 3575)です。 ミニレースML360のオプションにありますので、用意しておくと 便利です。

高さが合うように必要な敷板をバイトの下に敷きます。敷板での調整はネジで締めた際にバイトが沈む分を考慮するとうまくいきます。
*バイトは高くすることはできても、低くすることは当然できません。ML360は基本的には10ミリ角以上のバイトを取り付けることはできませんので注意しましょう。

六角レンチでしっかりバイトを止めます。この際敷板をバイトの上に のせて締めるとバイトを傷つけず、長持ちさせることができます。

さていよいよ切削ですが、最初は削りやすいアルミの丸棒16ミリを12ミリまで切削してみます。


*ミニレースML360の主軸貫通穴は16ミリです。つまり16ミリ穴が 貫通してますので、16ミリまでの丸棒なら、心間距離(ML360は360ミリ) を超える長さの物でも掴めることができ、切削が可能です。

切削油を準備します。切削油はキリコを逃がしたり、バイトの刃先を 冷やし長持ちさせるなどの効果がありますので特殊な作業以外は 使用しましょう。 手ごろな入れ物を用意し、使用済みの歯ブラシや 油筆などを使用します。今回はアルミ専用切削油「オンカットアルミ」を使用します。

スイッチは右へ回すと正転、左へ回すと逆転します。
誤って逆転で回すと、一瞬にしてバイトの刃が欠ける場合が
ありますので、常にスイッチを右へ回すクセをつけておきましょう。
スイッチを入れるときは「チャックにチャックハンドルがとりつけたままではないか」
「プーリーカバーがきちんとしまっているか」
「材料が緩んでいないか」等しっかり確認します。最初は慎重に作業しますが
慣れてくるとこういう点がないがしろになり、怪我の原因となりますので、初心者の時から
しっかりクセをつけましょう!

切削方法は旋盤工によっても十人十色でこれが正しいという
方法はありませんが、ここでは基本的な方法を説明します。
コラムが進むにつれ「限られた時間の中で正確な切削を行う」プロの方法等もご紹介していきたいと思います。
材料を回転させ面を少し削り、基準となる0点をだします。
材料が回っている状態で、バイトを動かさず材料にあてたままに
すると刃が欠けますので材料に触れた瞬間、バイトを右へ逃がします。

この時点で左手で横送りハンドルが動かないように
しっかり抑え、右手で「目盛リング」を0に合わせます。
送り方向の呼び名は、手前〜奥方向を「横送り」、三爪チャック〜心押し台方向を
「縦送り」と言います。ちょっと呼び方が逆のような感じがしますが
これが正しい呼び名になります。

いきなり16ミリを12ミリに削ると抵抗が大きく、難しいのでまずは14ミリまで
落とします。丸棒は回転していますので、ハンドルを1ミリ
送ると丸棒は2ミリ、つまり2倍削れます。これは基本的なことで非常に
重要です。0.5ミリ送れば、1ミリ削れ、1ミリ送れば2ミリ削れる
という具合に、送った分の2倍削れることが感覚で身につくように
訓練しましょう。
写真のように横送りハンドルを右に回し、目盛を1ミリに合わせます。

縦送りハンドルを回し、バイトを三爪チャック方向に移動して切削していきます。 アルミなので簡単に削れていきますが、アルミの切子はつながりますので注意しましょう。 もしうまく切削できない場合は再度センター出しをしっかり行ってみてください。



デジタルマイクロメーターでで計測します。 14.39ミリですので、再度ここで0点をとり、丸棒を2ミリ削るために 1ミリハンドルを送ります。12ミリより小さくなることは絶対に 避けなければならないので、最終仕上げをする余裕を残して 切削作業を行います。

再度計測すると 12.4ミリまできました。 残り0.4ミリですので、あとは精度を出していく為に 0.1ミリずつ慎重に削っていきます。



再度0点に合わせ、ハンドルを0.05ミリに合わせ切削します。 ここからが腕のみせどころです。繰り返し作業し、精度出しを 行いましょう。

数回の作業を経て、12.010ミリまで精度がでました。 1/100ミリはメーカー精度保証ではありませんが、時間をかければ かなりの精度まででますので、腕試しに挑戦してみてください。

しかし、精密旋盤にとって一番重要なのは、一回の作業工程で
どの位の精度がでるかではなく、別の材料で再度同じ工程をたどった場合に
どの位の精度がでるかという「繰り返し精度」です。
写真は先ほどの丸棒を逆にして、同じ工程をたどって作業した
結果の数字です。12.017ですので1回目より精度は
落ちましたが2/100ミリ以下ですから問題なく許容範囲内です。
ミニレースML360と安価な旋盤との最も大きな違いの一つが
この「繰り返し精度」です。